dan-matsu-ma

イアラー!

丸い鯛焼きのはなし

 鯛焼きには尻尾まで餡子が詰まっていたほうがいい、当然であろう。尻尾に餡子が詰まっていないほうが好きな人なぞいるのだろうか。いや、餡子が不得意ならばそれもありうるだろうが、そういう人々は鯛焼き自体があまり好きではないだろう。私は鯛焼き愛する人についての話をしているのだ。なぜ尻尾に餡子が詰まっていない鯛焼きがこの世に存在するのか。もしかしてこれが必要悪というやつなのか。
 とにもかくにも、丸い鯛焼きである。昼間、私は行きつけにしている喫茶店にてランチセットとビールを胃袋に詰め、すっかりいい気分であった。満腹になると甘味を欲すのは人間の性である。私は喫茶店に貼られている「今週のデザート」に目を向けた。

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でんきあんかとわたし

 別れの季節だ。

 冷え性の辛さは冷え性にしかわかるまい。手足が冷える、という一言では片付けられない闇があるのだ。いくら厚着をしても、手足だけが水に漬かっているような冷たさ。靴下を履いても手袋をつけてもおさまるものではない、内側から冷えているのだから。エアコンをがんがん利かせた部屋のなかで、体中をかけめぐる寒気。手足を伸ばして眠ることなど出来ないのだ、足が身体から遠ざかっていくほど体温が下がっていくのだ、冷え性の辛さを知らない人間は寒さについて語るべきではないと常々思っているのだ。

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